東方紅魔郷の考察/前編

紅魔郷が発表されたのは2002年だそうです。
要は、すでに10年以上の月日を経た作品だということです。

東方という作品を随分と昔のもののようにおもえてしまう感覚は、
当然、錯覚ではないのかもしれません。

むろん、東方作品は今年までに至り途切れることなく新作を発表され続けていますので、
古いというと、まったくそうではないのですが。

さて、当記事では、この作品における主題やストーリーには触れません。
その主題やストーリーから読み取ることができる秘められた箇所、
原作者がかたらなかった部位を、程度の差はあれ論理飛躍しない程度に、考察します。

本作において、メインストーリーである紅霧異変を引き起こした張本人は、
“レミリア・スカーレットという名の妖怪であり、種族は吸血鬼です。
吸血鬼といえば、西洋の妖怪の代表格ともいえる存在ですが、そんな彼女とその一族郎党は、
どういう経緯をもって、東方世界(幻想郷)に辿り着いたのだろうか。

幻想郷には、現実世界で滅び去ったものを引き寄せる、みえざる内部構造が仕組まれているとされる。
ここで注目したいのは、レミリアが真実、西洋の妖怪であった場合、というところです。

東方作品は、その媒体をゲームのみに絞れば、現時点で15作品をかぞえます。
その歴代の作品における登場キャラクターは100を超えますが、
その中でも名前が漢字表記ではないキャラクター、加えて出自が東洋的ではないとされるキャラクターは、
実は両手で数えるにたりるのです。

逆に西洋的であるにも関わらず、漢字表記のキャラクターもいるにはいますが、
一度前述した規則にしたがって抽出できるであろうキャラクターを羅列してみます。

 ニ:アリス・マーガトロイド(以下アリス)
ニ:プリズムリバー三姉妹(ルナサ/メルラン/リリカ)
 五:メディスン・メランコリー(以下メディスン)
 一五:クラウンピース
一五:ヘカーティア・ラピスラズリ(以下ヘカーティア)

恐らくは、それほど偏見や主観はないと思える選定結果になっていると思います。
100を数える人神妖の中で、西洋の様相をもつ存在が、
たったこれだけというのは、なにか作為的なものをかんじはしないでしょうか。

では、その作為とはなんでしょう。

前提として、幻想郷の”みえざる”仕組みは、”西洋域を対象外としている”、と仮定します。
言い換えれば、西洋の存在は、東洋の幻想郷にはいることができない、という法理になります。

そうすると、レミリアという西洋の象徴の到来が、また違ったふうにみえてきます。
その漠然とした想像を確固とした認識にするためには、上記5つのキャラクターの西洋色を、
東洋に染め替えられるならそうして、西洋色をレミリアただ一人のための特色にしたいと、
なにやら理解者理解のなかで、勝手にそう思っているのですが、
それは別に難儀なことではない、とじつの私は考えています。
ニのプリズムリバー以外は、容易です。

まず、アリスは例外としてかんがえません。
これはこの記事を読んでいる数奇で稀有な方なら、事情は察してくれると思います。
「アリスについて考えるだけで、寿命がなくなる」
という格言が、東方界隈にあるとかないとか。

クラウンピース、ヘカーティアも論外である。
このふたつの存在は確定的に西洋色ですが、この2人との邂逅は幻想郷においてではなく、
”外”へ出向いたための偶発的結果であり、出向く機会となった月という中継的存在がなければ、
この2人に出会うことは、死後ですらありえなかったでしょう。

では、メディスンはどうでしょう。
彼女は新種(若いという意味での)の妖怪であり、生まれてこの方、鈴蘭畑からでたことがない、とされる。
そしてその事実は、自己の発言もさることながら、幻想郷管轄の閻魔である、
四季映姫という別のキャラクターの発言からも読み取れる。

つまり、メディスンには鈴蘭畑以前の過去は認識できないのであるから、
東洋生まれとしても差し支えはない。
ただ余談として、付喪神をあつかった輝針城や、同じ有毒である彼岸花を象徴する蓮台野夜行、
また外貌や時代背景から普製のピスクドールとしたり、その元所持者の推測、
青い目の人形(エニグマティックドール)とした場合の日外示唆風刺的な存在としたりなど、
切り口によっていろいろな創作味がうまれる要素をもつメディスンですが、
表面的には、東洋的存在としても、大きな差異はうまれないだろうと考えています。

 

(後編へつづく)