(雑記)蒸留所「Glen_Goyne」

ご紹介するお写真はすべてグレンゴイン蒸留所の内外です。
つい先日、スコットランドへご旅行に行かれたお客様から、いただいたものですので私自身が赴いたわけではありませんが、
便宜上、まるで行った風な口で書きます。
どうか笑いを噛みころしてご覧ください。

グレンゴイン蒸留所の位置は、グラスゴーから北へ20キロほどのところにあります。
区分的にはちょうどハイランドとローランドの境目(ハイランド境界断層)あたりに位置し、
製造は境界内のハイランドで、熟成は境界線を横切ってローランドで、という面白くも奥ゆかしいことをするグレンゴイン蒸留所。

グラスゴーというイングランドの上都市から離れていくにつれ、
グレンゴインに近づくにつれ、どんどん風景は牧歌的になっていきます。

到着すると、そこは映画のロケーションにも選ばれるような自然豊かな場所で、
森に囲まれたダムゴインという丘の麓に、グレンゴイン蒸留所はあります。

ハイランドで小さな蒸留所として世界的に有名なエドラダワーほど質朴ではなく、
グレンタレットやディーンストンほど、けして大きくはない蒸留所ですが、
それにも増して、あたりの景観は清涼な空気が流れ、優しさの漂う蒸留所です。

そんな清浄な敷地の奥にある小さな清流は、グレンゴインの仕込み水として使われています。

グレンゴイン蒸留所の歴史ですが、それはゆうに200年をこえ、
スコットランドの老舗ディストラリーの1つとして数えられます。
同じ南ハイランドで有名なタリバーディンが1900年代のウイスキーブームに現れた蒸留所だということを考えれば、
なかなか深い歴史ある蒸留所だといえると思います。

歴史深い蒸留所は、どこか自然豊かなところに立っている節があるのか、
グレンゴインのフレーバーもその自然の豊かさを映したかのように、柔和な風味が特徴です。
用いる麦芽はスコットランド産の二条大麦、ゴールデンプロミスで、
こちらはアルコール収率が比較的高いことで有名だが、現在はこの品種よりもっとアルコールを作るのに適した品種があるにも関わらず、
グレンゴインはこの麦芽を使い続けています。
また麦芽にまったくピートをたきこまないノンピーテッドにすることによって、
麦本来の特徴がストレートにあらわれ、くどくなく、すっきりとした味わいになっています。

さて、ここからは余談なのですが、そういえば、グレンゴインはゲール語、或いは古ノルド語でなんという意味をもつのでしょうか。
職業柄、よくラベルネームの意味を聞かれますが、調べてみてもどうも釈然としません。
鍛冶屋の谷とか、雁の谷とか、はたまた白の谷、傷の谷とも、諸説謂れがあるようですが、
(ゴインと名のつく地名は多い)
母国語すら危うい私からすれば言語の考察など触らぬ神。

しかし、地名は必ずなにかしら由来があるものだということを鑑みるなら、
またそれが本来の意味合いから異様に乖離した結果であったとしても、
グレンゴイン蒸留所の立っている風景から、雁が青空を雁行する模様が、
やや短絡的かもしれないが風情があるのではないかなと、
まだみぬグレンゴイン蒸留所の青空を思い浮かべ、
私自身は、勝手ながら、そう結論づけました。