(雑記)出雲・八重垣


一泊二日、家族で出雲へ行きました。
写真は、八重垣神社の鳥居です。

八重垣神社は、出雲大社・須我神社に関連する非常に優麗な神社であり、
かの神話・三貴子の末子である素盞鳴尊の第一夫人である櫛名田姫が祀られている。

前述の2つの神社はもとより、八重垣神社も松江・宍道湖から離れておらず、
車であれば無理なくまわれる距離ですので、古事の好きな方はぜひとも訪れてみてください。

さて、八重垣神社です。
私は、古事記・日本書紀に記される国産みから天孫降臨にいたる大国主命の国譲りまで、
程度よく知識を携えて、この八重垣神社を訪れたつもりでしたが、
やはり当地で得る智識というものは、机上では届きづらいものだと感じます。

境内に、鏡の池という、清浄な場所があります。
素盞鳴尊が八岐大蛇を退治する折、櫛名田姫が隠れていた霊験ある森であるそうで、
鏡の池は、その鎮守の森のなかにあります。

滾々と湧き出る清水は、櫛名田姫が当時口にし、
そして自身の姿を映したということで別名、姿見の池とも言われます。

ちなみにこの鏡の池は出雲大社にもあります。
出雲大社の鏡の池には、このような説明は記されていませんでしたが、
八重垣の鏡の池には半紙を浮かべて、その吉凶を占う催しがありました。
水に浮かべてその文字を読み取るという行為が、京都の貴船神社のそれと似ていますが、
神様は巧みであるなあ、としみじみとします。

もうひとつ、鏡の池について、とても大事なことを書いておきましょう。
池のなかに物を落とすと、
それがいかなるものでも掬いあげることは、かないません。
お財布や、撮影のための携帯など、うっかり物を落とさないよう気をつけましょう。
万が一落とすと、たいへん見苦しいことになります。

櫛名田姫というと、櫛に变化して、素盞鳴尊と大蛇退治をし、
そこから櫛の由来がどうのこうのと、連れ立った家族に講釈することになるだろうと思っていた私は、
すっかりその任を忘れ、忙しく境内をひとりぐるぐるしておりました。

八雲立つ 出雲八重垣 妻ごみに 八重垣作る その八重垣を

日本の最古の和歌として知られるこの和歌は、櫛名田姫に捧げられたものですが、
いまの八重垣神社に、和歌にあるような荘重な造りは見受けられません。
ただ、須我神社にしろ、こちらの八重垣にしろ、神社の境内の外枠には水流が流れています。
この川の水流が、垣根の一つだったのだろうと考えると、
少しは想像のなかの八重垣が、太古の実像に近づいた感触があります。

八重垣神社は著書「怪談」で有名なラフカディオ・ハーンが、愛した場所の1つでもあります。
実はこのハーンが暮らしていた旧邸が出雲に遺されており、
小泉八雲記念館として開かれていたはずでしたが、
私が訪れた時期はあいにく、当館改装工事中のさなかであり、なかに入ることはできませんでした。

皆様におかれましては、旅行の計画は事前に十分にお練りください。