これからのバー業界

数日前に、大阪北部を中心に地震が襲いました。
私の住んでいる淀川区にも、ガソリンスタンドにトラックが突っ込んだかのような轟音が響きましたが、
その音が地鳴りであったと想到するまでに、たいへん長い時間を要しました。
まずは、被害に遭われた方々の、ご無事と一日もはやいご快復をお祈り申し上げます。


さて、バーテンダーとしての独立を考えはじめると、
今まで以上に、これからのバー業界について、考えることが増えました。
身の丈にあわないことを考えているという自覚は、あります。

バーを利用するに於いて、メリットとデメリットが存在します。
銘酒を飲むこと、創作性に満ちたカクテルを飲むこと、バーという空間そのもの、
バーテンダーの技量・話術など、バーにしかありえないメリットは、並べるだけでたくさんあります。

しかし、上記の中で、銘酒を飲むこと。
これだけは、もうメリットになりえないとおもいます。
多くの同業者は、大手量販店…スーパーなどに置かれている酒類には興味がないかとおもいます。
そのはずで、自分の熟知しているコーナーをわざわざそれに特化していないところで、
また自分自身のライフラインのために利用しているところで、敢えて覗く人はごく少数だとおもいます。

が、その量販店の酒類の充実さは、ここ数年で諸兄がきっと驚嘆さえ感じるものとなっているはずです。
オーヘントッシャン、バルヴェニー、アードモア、タリスカーなど、(サントリーさんばかりですが)
流石に全てオフィシャル・スタンダードではありますが、
そんなウイスキーのラインナップを、半額のお刺身をめがけて突撃するような我々の味方、スーパーで見かけることが、かつてあったでしょうか。

バーには暗黙的に「よく目にする酒は置かない」という信条のようなものがあると思いますが、
先に書いたマーケットの酒類の充実と、酒類のネット販売の気安さを加味すれば、
バーラックに置くものも、再考を要する時期がきているのでは、と感じます。
加えて「銘酒を売る」ことに特化したバーは、別種の武器がない限り、生き残りは難しいように思えるし、
またそれは、今からそれに特化したバーを開業するとなれば、尚のことだと思います。

以上のことから、これからのバーに枢要なのは、カクテル、空間、バーテンダー本人の3要素ということになりましょうが、
少し長くなりそうな予感があるので、いちどこの辺で記事を止めようとおもいます。
また別の機会に、記したいと思う議題であります。

末筆に、被災罹災した先輩諸兄の店舗のいち早い復旧を、心からお祈りいたします。