(雑記)進化と退嬰の歴史―後編

さて、日本のウイスキーの蒸留所は、いったいいくつあるのでしょうか。
執筆時点で、52ヶ所ある。驚きです。たいへん、多いです。

(此度の情報は、東京都港区にて3店舗運営されている「BAR新海」様が経営されている
「Japanese Whisky Dictionary-日本のウイスキー辞典-」を、参考にしております。)

北海道地方
1. ニッカウヰスキー 余市蒸溜所
2. 堅展実業  厚岸蒸溜所
3. 北海道自由ウイスキー 紅櫻蒸溜所
4. 八海醸造 ニセコ蒸溜所

東北地方
2-1. ニッカウヰスキー 宮城峡蒸溜所
2-2. 金龍 遊佐蒸溜所
2-3. 笹の川酒造 安積蒸溜所
2-4. ドリームリンク 秋田蒸溜所

関東地方
3-1. 木内酒造 額田醸造所/八郷蒸溜所
3-2. ベンチャーウイスキー 秩父蒸溜所
3-3. ベンチャーウイスキー 秩父第2蒸溜所
3-4. 東亜酒造 羽生蒸溜所
3-5. 光酒造 鴻巣蒸溜所

中部地方
4-1. 新潟麦酒 忍蒸留所
4-2. サントリースピリッツ 白州蒸溜所
4-3. 本坊酒造 マルス信州蒸溜所
4-4. 軽井沢蒸留酒製造 小諸蒸溜所
4-5. キリンディスティラリー 富士御殿場蒸溜所
4-6. ガイアフロー 静岡蒸溜所
4-7. 若鶴酒造 三郎丸蒸留所
4-8. サントリー知多蒸溜所
4-9. 長濱浪漫ビール 長濱蒸溜所
4-10. 新潟小規模蒸溜所 新潟亀田蒸溜所
4-11. 戸塚酒造 軽井沢蒸溜所
4-12. 清州桜醸造
4-13. 十山株式会社 井川蒸留所
4-14. 玉泉堂酒造 養老蒸留所
4-15.Nozawa Onsen Distillery株式会社 野沢温泉蒸留所
4-16.井出醸造店 富士北麓蒸溜所
4-17.吉田電材工業株式会社 吉田電材蒸留所
4-18.舩坂酒造店 飛騨高山蒸留所
4-19.SASAKAWA WHISKY株式会社 富士山蒸溜所

5.関西地方
5-1. サントリースピリッツ 山崎蒸溜所
5-2. 江井ヶ嶋酒造
5-3. 京都酒造 京都みやこ蒸溜所
5-4.明石酒類醸造株式会社  海峡蒸溜所
5-5.アクサスホールディングス株式会社  六甲山蒸溜所

6.中国地方
6-1. 松井酒造 倉吉蒸溜所
6-2. 宮下酒造 岡山蒸溜所
6-3. サクラオB&D 桜尾蒸留所
6-4.三宅本店
6-5.千代むすび酒造

7.四国地方

四国にはないようです。(なんでだろう?)

8.九州・沖縄地方
8-1. 嘉之助蒸溜所
8-2. 本坊酒造 マルス津貫蒸溜所
8-3. ヘリオス酒造
8-4. 津崎酒店 久住蒸留所
8-5. 黒木本店 尾鈴山蒸溜所
8-6. 西酒造 御岳蒸留所
8-7. 新里酒造
8-8. 篠崎 新道ウイスキー蒸溜所
8-9. 株式会社 山鹿蒸溜所
8-10.黄金酒造 横川蒸留所ウイスキー工場

私がこのとき注目したのは、下線をひいた蒸留所です。
その条件として、私が今の今まで「知らなかった」ことが条件なので、
以外の蒸留所が優れていないという話ではありません。

まず「軽井沢蒸留酒製造 小諸蒸溜所」。
この蒸留所は台湾のカバラン マスターブレンダー イアン・チャンが設立者の双璧になっています。
このブレンダーという職業を獲得することが、ウイスキー業界での成功の秘訣といっても過言ではないはずで、しかしそれが、我が国である日本では難しい。
その理由はここでは多くは語りませんが、その最高難易度をらくらくクリアし、
しかも明らかな業界のプロが計画に携わっている、まさに成功が約束された蒸留所だと思えます。

黒木本店 尾鈴山蒸溜所も面白いです。
こちらは、「百年の孤独」「山ねこ」などの有名焼酎を手掛けている焼酎蔵であり、業界の辣腕酒造さんですが、
スコットランドで(少し前まで)一番ちいさな蒸留所として有名な「エドラダワー」に感銘をうけ、大自然のなかに敢えて蒸留所を作る徹底ぶり。
そして大麦は海外製ではなく、自社製品。面白いウイスキーがおおいに期待できると思います。

最後に、Nozawa Onsen Distillery株式会社 野沢温泉蒸留所で紹介は最後です。
操業開始は、なんと今月から。
代表は、フィリップ・リチャーズという野沢温泉村の中心、大湯通りにある「TANUKI BAR」を経営している方で、
2018年には外国の方が地域振興に取り組んでいると日経新聞にも取り上げられていました。
ウイスキーは量より質と言い切り、地元愛溢れるクラフトジンの製造、ホストツーリズムイベント、
おみやげの販売、バー、飲食店の経営、通信販売など、ありとあらゆる手を尽くされており、ホームページなどからもその熱量が伝わってきます。
必ず、成功すると断言できる蒸留所のひとつです。

さて、勝手な推測ですが、ウイスキー蒸溜所建立には、日本の地域振興を兼ねているのだろうと思われます。
これだけ多くの蒸溜所が出来れば、日本のウイスキーは今以上に文化価値を持ち、法律も整備されることが期待されます。
なにせ、日本には他国のウイスキーと違い、国法による厳格な統制がなされていません。

話は急に変わるが、蒸溜所を設立するには、おおよそ初期費用で5億程度かかると推測できます。
そして、初期費用もさることながら、今現在、多くの蒸溜所がそうであるように、
商品をウイスキーのみに絞るのであれば、最低でも3年間は商品をほぼリリースできない状態が続きます。

そして、勿論ながら、蒸溜所は一人では運営できない。
多数の色々な役職の方が一致団結し、その場所で努め、はじめてウイスキーは出来上がる。
前記した法整備が盤石となれば、雇用も比例してすすむのだろうと想像できます。日本国にとって、よいことばかりだと思います。

さて、しかしながら、これこそが前編で含んだことですが、
海外の蒸溜所は、多くの蒸溜所が淘汰された歴史をもっています。
であるから(と私は思っている)、海外の新しい蒸留所のオーナーは、同業界としては見知った名前が多いのだと。
徒手空拳で臨むベンチャー企業は、圧倒的に少ない。

日本のウイスキー蒸溜所は、幸か不幸か、そのような荒波に揉まれたことがない。
このままでは、恐らく、半数以下にも、なるでしょう。
私は、限られた一部の人にしか話していませんが、この業界でやりたいことがあります。
この記事を書いて、そのやりたいことが、ひとつ増えた気がします。