(雑記)日本のウイスキーについて-後編

前回のまとめと同じく、注目蒸溜所をピックアップしました。
記されなかった蒸溜所には注目していない、というわけではないので、その点はご了承ください。

1.利尻蒸溜所(北海道)
2.鴻巣蒸溜所(埼玉県)
3.飯山マウンテンファーム蒸溜所(長野県)
4.久住蒸溜所(大分県)

数字は順位ではなく、地理上の話です。

1・2・3は全くの偶然ですが、蒸溜所が外国人オーナーです。(スタッフには日本人も多くいる)
2・4はウイスキーマガジンの取材をうけ、その記事もネット上で閲覧できます。
1・3はウイスキーフェスティバル2023in大阪にも出展します。
(主催のウイスキー文化研究所代表、土屋守氏は自身のブログで3について記事を書いているし、1についても地上波でコメントを残している)

4に至っては、BSフジの番組ウイスキペディアにも出演している。

あとは、規模が小さくて、広告まで手がまわらないところなどは、全て一致していると思います。
大本は大手酒蔵であったりと、地盤が比較的しっかりしている企業ではないところも一致しています。

しかしながら、だからといってアマチュアであるというわけでは、ありません。

利尻蒸溜所は、スコッチのミニマムディスティラリーとして有名なエドラダワーと同じく3人という小規模で運営されているが、
福島県の安積蒸溜所(笹の川酒造)にて、ウイスキーの製造工程の中で蒸溜を担当する職人(スチルマン)の経験と、
主力級ブレンデッドウイスキー「963」のブレンダーを兼任した経験のある田浦大輔氏を中核の製造責任者(恐らく)として据えられており、
またオーナーのケイシー・ウォール氏の意向で、全量シングルモルトという野望と、
長熟を念頭においたリリース志向で、原酒不足に陥り、長熟ウイスキーの完成度が低くなることへの懸念がなさそうというのも好印象です。
また、チリ出身のハビエル・ネグレテ氏はアメリカのウイスキーに対する造詣が深く、
東大法学部出身であるにも関わらず、同ネグレテ氏の通訳とウイスキー造りに飛び込んだ平山靖敏氏23歳にも頭が下がる思いです。
(まじか・・・すごいな・・・)

鴻巣蒸溜所は、戦略として敢えてメディアへの露出を避けてきた蒸溜所であり、
オーナーのチョア・クワン・フア氏ことエリック氏は、30代でスコッチに魅了されてから、25年間同業界で働き、
イギリス・ノーフォークのセントジョージ蒸溜所とスコットランド・パースシャーのストラスアーン蒸溜所に感銘をうけ、
同様に洗練されたウイスキーを作りたいと意欲を示している。
オーナー自身が卓越した厚みのある経験者であることは、もはや成功を約束されているといっても過言ではなさそうだが、
実際の製造責任者であるのは茨城県出身の奥澤正雄氏。
クラフトビール、日本酒、ワインなどの酒造分野で経験が豊富で、 調べてみると、
恐らくだが山栄 浜名湖ブルワリーという企業で同名の製造責任者が「浜名湖ビール ヘブンズ・ドア」というタイトルで賞を取られている。
ビール製造としてのスペシャリストというのは、まず間違いないだろう。
製造にあたってのモットーは「クリエイティブな自由を確保」と謳っており、ニュージランドから輸入したマヌカ材でスモークした大麦モルトの使用や、
大麦モルト65%と米(山田錦)35%という、一見すると異質な、そしてやや高価なグレーンウイスキーにも挑戦している。(面白そうだ~)
しかし、生産のほとんどは海外輸出されるようで、国内流通に関しては微妙である。

これは推測ですが、市場の広い海外での認知度を上げてから、
生産ライン向上を踏まえて日本市場へアクセスしてくるのではないか、と予想しています。
 

飯山マウンテンファーム蒸溜所は、イタリアのパルマ出身であるオーナーのデビッド氏と同じく、
出身地のイタリア・フリッリ社製を用い、これは日本初の試みとなる。
ウイスキー造りをはじめるために長野県・飯山にたどり着くまで、北は利尻、南は沖縄まで広く探索した同氏は、
結局同地が最も製造に優れていると判断したようだ。
(余談だが、輸入した蒸留器二基に、もりひめ、もりたろうと、飯山市なべくら高原のシンボルであるブナの巨木から因んで命名するなど、愛が熱い)
また、 2019年に蒸溜所が稼働する数年前から、同氏は麦や米の栽培を開始している。
日本酒などにも見られる風潮だが、原料を他に依存するのではなく、土地のものを活用しようという流れである。
また、樽工場も建設中(完成した?)とのことで、いっそうのファーム・トゥ・ボトルがすすむ。
飯山はブナ材が豊富であるため、樽材にも使われるのだろうかと、妄想が楽しい。
ブナ材はクーパー的には加工しやすい特徴を持っているように見えるけれど、水分が多いらしく、乾燥を徹底しないと腐食に繋がるらしい。
それなら、液体の保存には不向きなのかなあ・・・。(専門外なので、このへんで妄想はやめにします。)

久住蒸溜所のオーナーは、宇戸田詳自氏である。
知る人ぞ知る、低迷期のイチローズモルトを自社でボトリングして販売を手助けしていた御大である。
当時はバーを10件程度まわって、1本売れればよい程度の売れ行きだったイチローズ。
その中には国内ウイスキーで一時最高額をつけたカードシリーズのイチローズモルトもあったらしい。
あまり書くと朋輩諸兄の歯ぎしりが聞こえそうなのでその辺りはもう書かないが、後に大空へ飛躍を遂げるイチローズモルトの後押しもあり、
ウイスキー製造の夢を実現するために動き出した。
久住という地には、1989年まで小早川酒造という酒蔵があり、酒蔵があったということは、良い水があるに違いないと宇戸田氏は考えられ、
実際に豊富な水源を獲得したあとは、懇意の秩父蒸溜所での研修、翌年にはマルス津貫蒸溜所でも研修もうけるなど、
超強力な横のつながりが見受けられる。また大本の企業は洋酒流通に深いため、販路をすでに獲得しているのは圧倒的な強みであると思う。

以上、記事はこの辺りで止めますが、
この記事を読まれて興味が出た方おられましたら、
是非皆さんで国内のウイスキー、盛り上げていきましょう。