(雑記)バーメニューの作り方所見

こんばんは。
Coffee&Liquor AseeK店主です。

陽気と寒気が代る代るとするので、体調を崩さないようにしたい今日此の頃です。
すこしばかり暖かくなったとしても、依然としていまは冬であるという認識のもと、普段の服装は厚着で過ごしたいものです。

さて、表題のことです。
メニューの作り方――特にバーのメニューの所見を述べたいとおもいます。
「お前、まともにメニュー一冊も作ったことないじゃあないか」というお声が聞こえてきそうですが、
この際、実績は関係がないのです。
素晴らしい(まことに主観ながら)メニューを作ることができる材料(助言)は、すでに私の机の上にある程度揃っていると思われるので、ここは敢えて物ではなくて理論から書き出そうと思い至った次第です。
学生気分の頃、なにか物事を書き起こす前には、必ずデータベース――年表であったりを作っていた癖が、いまでも抜けていないようです。私はこれを佳い癖だと思っていますが、さてどうなのでしょう。

さてまず、基本から書きます。
これらは、みやすさという観点から、箇条書きがよいと思うので、そういたします。

1.横書きの場合、文字揃えは表題以外は左寄せで書く。(中央寄せはよろしくない)
※横書きメニューは右開き、縦書きメニューは左開き。
2.店舗に関係する広告ページは、最奥に配置する。
3.カテゴリで分けるより、プライスで分ける。
4.カフェメニュー(ノンアルコール)は分ける。
5.もし商品説明を書くなら、読み飽きない長さと内容に十分配慮する。
6.基本を逸脱した変わったものは扱わない。
7.大衆的であることを原則としつつ、そのジャンルのまま昇華させる。
8.商品の本質を理解し、それ自体をどこまで解体或いはどうやって構築できるかを探究する。
9.自分自身の感覚と大衆の感覚は常にずれているということを理解し、矯正作業をおこなう。

以上が現在の私という人間が考えるメニュー作りに対する答えになります。
少しばかりメニューの製本というより、商品開発の気概が入り込んでいますが、同じことだと思うので同列に記しております。

1-4は、心がければすぐにでも実践できるものなので、中では容易です。
但し5-9は、感覚的なものに感じます。また、好悪の問題も関わってくるでしょう。
9は、特にバーテンダー(私も無論含めて)は、深く理解しなくてはならないのではないか、と思います。
バーにはメニューがない、という一般的な通念は、こと営利の話はともかく、今となってはやや妙な話です。
そこで、さてそれではメニューを作るかとなったときに「これくらいは理解してもらえているはずだ」という自分自身の設定した常識のラインは、多くの場合――非常識(エンドユーザー的な意味での)の範疇である、と考えるべきだと、私は思っています。

要は、ジントニックのトニックがなにかわからない――なんてことはない、と思うのはバーテンダーのエゴである可能性が高いのではないか、ということです。
ただ、メニューは用意しなくてよいという方向性も、それくらいはわかってから来いという姿勢も、そういったお店は無論、世の中にあっていいと思いますし、寧ろあったほうがいいとも思っています。
実際に、高級と名のつくお店には多くのマナーがありますし、それらは「しきたり」と言い換えてもいいですし、「たしなみ」ともいえますし、そうなってくるとそれはもはや、「知的文化」ともいえるので、変革べかざる「美意識」たるものです。

まあ、店主である私は比較的お喋り気質なので、なんでも答えたい性分ですから、もし分類されるのであれば不肖、高級店ではありそうな弊店ですが、トニックがわからなくてもジンがわからなくても、山上憶良が日本最古のインスパイアーなのかどうかわからなくても、聞いてもらえればはっきりと、或いはそこはかとなくお答えすることに、なんらやぶさかではないのが、弊店のポリシーです。

話が長くなりましたが、この範囲についてはまさしく、正解がない、と思われるので、苦しまれること間違いないでしょう。私もずっと、窒息しそうです。
しかしながら、その正解がないということを根底に常に据えつつ、業を終えるまで悩み続けることこそが、恐らくきわめて人間的な変化に終始できるのだろうといえそうです。そしてそれは、必ずしも進化である必要はないのかもしれません。

どこの誰が、何人が電子の世界の辺陬極地に刻まれる私の文章を読まれるかは存じませんが、もしなにかの参考になるのであれば、それはたいへん幸甚であるとおもいます。

Coffee & Liquor AseeK 店主 敬白